障害年金とは
障害年金は公的年金に加入している人が、病気やケガを原因として一定の障害状態になったときに支給される年金です。便利な制度ではありますが、受給にあたっては何かデメリットはないか心配になるかもしれません。
結論としては、障害年金にはいくつかデメリットと呼べる側面はあるものの、総じてメリットの方が大きい制度です。
こちらの記事では障害年金の受給におけるメリットとデメリットの両面をご紹介しております。
なおこの記事は障害年金の制度について、ある程度理解している方向けの内容です。
障害年金の制度について概要を知りたい方は、先にこちらの記事をご覧ください。
障害年金を受給するメリット
①経済的に生活をサポートしてくれる
障害年金を受け取ることの最大のメリットは経済的な支援が受けられることでしょう。
障がいを持つ方々は働けなくなったり、仕事に制限を受けることがあり、収入が減じてしまう可能性があります。
その中でも障害年金を受給することで生活を安定させることができます。
②経済的な不安を解消して治療に専念できる
障害年金を受け取る方の大半が精神疾患であることをご存じでしょうか。
そのような方々にとっても、もちろん、そのほかの障がいを持つ方でも経済的な不安は時として治療の足かせとなります。
障害年金を受給することは単に経済的支援を得るだけでなく、安定した収入で将来への不安をなくし治療に専念する手段でもあるのです。
③非課税の所得である
障害年金は老齢年金とは違い非課税の所得です。したがって障害年金を受け取ってもその所得から税金を納める必要がなくなります。
障害年金と老齢年金のどちらも受給できる方は課税分を含めてどちらが手元に残る額が多いかを考える必要があります。
④生活保護費と違って使い道が限定されない
生活保護費との支給調整で少し触れますが、障害年金は障がいの有無に対して支払われる制度であるため、その使い道に制限はありません。
一方で生活保護では原則、自動車や住宅などの購入には生活保護費を使えないなどの制限があります。
⑤働きながらでも受け取れる
障害年金は就労をしていたとしても受け取ることができます。
特に、厚生年金では比較的軽度の障がいでも受給可能性のある障害年金3級があるため障がいによって就労に制限を受けた場合などに経済的な困窮を防ぐ防波堤となります。
ただし、就労実態が障害年金申請における審査結果を左右するケースもあるので注意が必要です。
⑥将来の老齢年金が減ることはない
障害年金を受け取ったからといって、将来受け取る老齢年金が減額されることはありません。
ただし、障害年金の受給が決まった後に国民年金保険料の法定免除を申請した場合には、法定免除となった期間の分だけ老齢基礎年金は減額されます。
⑦法定免除が受けられる
障害年金の1級又は2級の受給が決定した場合、申請をすることで国民年金保険料の支払いは法定免除となります。
この場合、免除となった期間は国民年金保険料の納付はありませんが、国が半分を支払った扱いとなります。
つまり、将来受け取る老齢基礎年金にも半額は反映されますので老齢年金を全く受け取れないということはありません。
また、老齢基礎年金の額を多くしたい場合には自主的に国民年金保険料を納めることも出来ます。
⑧初診日が20歳以降の障害年金には所得制限はない
初診日が20歳以降の障害年金には受給者本人の所得制限はありません。
給与収入や不動産収入等の収入があっても障害年金が減額されることはありません。
ただし、初診日が20歳以前の場合、障害基礎年金については、受給権者本人が年金保険料を納付していないため、受給権者本人に一定の所得制限がかかります。
障害年金のよくあるQ&A
Q. 障害年金を受給すると会社への報告が必要でしょうか
A.大丈夫です。報告の必要はありません。
Q. 障害年金を受給すると会社に知られてしまうのでしょうか
A.基本的に日本年金機構から、従業員の方の障害年金受給状況に関する情報が会社にわたることはありません。
ただし、障害厚生年金を受給中または請求中の方で、同じ傷病で傷病手当金を請求する場合には障害年金を受給しているかどうかを聞かれてしまいます。
会社に知られることで法律上のデメリットは特にありませんが、心理的に抵抗がある場合には注意が必要です。
Q. 障害年金を受給すると会社での年末調整の際に障害年金額の申告が必要でしょうか
A.年末調整の書類に障害年金の受給の有無を問うものはありません。
ただし、障害者控除に該当するか否かを記載する欄はあり、年末調整を行うにあたって、障害者控除を適用するかどうかを会社が判断するために必要となる欄です。
しかしながら、障害者控除の可否は税法上の問題ですので国民年金法上の障害年金とは関係がありません。
障害者控除の対象だからといって障害年金の受給資格があるということにはなりませんので障害年金の申告は必要ありませんし、障害年金の受給を会社に知られてしまうこともありません。
Q. 障害年金を受給すると確定申告が必要になるのでしょうか
A.収入が障害年金のみの方や収入が会社からの給与(基本的に一か所)と障害年金の方の場合、確定申告は不要です。
収入が会社からの給与と副業(年間20万円以上)と障害年金の方の場合のみ、確定申告が必要となります。
Q. 障害年金の受給が決定したら自動的に法定免除になるのですか
A.いいえ、自動的に法廷免除にはなりません。
ご自身で、年金証書をお持ちになって法定免除の手続きをする必要があります。「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」という用紙を、お住いの役場に提出することで、法定免除が受けられるようになります。
Q. 障害年金受給者のなかで、法定免除を受けられる対象は?
A.障害基礎年金ならびに障害厚生年金・障害共済年金の1級または2級以上を受けている方です。
残念ながら3級の方、障害手当金の方は該当しません。障害認定された日を含む月の前月の保険料から免除となります。
法定免除が決定した場合、障害年金の申請を行っていた期間や審査を待っていた期間に、すでに納付済の国民年金保険料は返金されますのでご安心ください。
雇用保険の失業給付と一緒に障害年金はもらえますか?
A.はい。もらえます。
雇用保険と障害年金の併給調整の制度はないため、失業給付をもらっていても障害年金を請求することができます。
また、失業給付を受けきってから、障害年金を請求するなどタイミングをずらす必要もありません。
Q. 障害年金の受給に対して負い目を感じてしまいます
A.障害年金は、一部の例外を除けば、保険制度による保険料支払の対価として、保険料を払っている人が受給できる正当な権利ですので、負い目を感じる必要は全くありません。
障害年金は日本国憲法第25条による生存権の保障としての社会保障制度ですので国民の権利でもあります。
障害年金のデメリット
①他の制度の支給額が調整される場合がある
生活保護との支給調整
生活保護とは
さまざまな理由により生活に困窮している人々に対して、積極的にそれらの人々の自立した生活ができるよう援助する制度です。
生活保護との支給調整について
障害年金は生活保護制度と併給が可能です。一方で両制度を利用する場合には支給額の調整が行われます。
例えば生活保護の支給額が20万円だった場合に障害年金10万円が受給できるようになったとすると、生活保護制度で支給される10万円となり総額で20万円が支給されることとなります。
一見意味がないように見えるこの支給調整ですが、障害年金1級・2級の受給者には「障害者加算」と言って居住地域と障害等級によって異なりますが、おおよそ15,000〜25,000円の範囲で生活保護費が加算されます。
また、後述しますが、生活保護費と異なり使途に制限がなくなることも障害年金を受給するメリットの一つです。
傷病手当金との支給調整
傷病手当金とは
傷病手当金とは保険に入っている人が事故や病気などで療養が必要となり、働けなくなってから約1年6か月の間手当金が支給される制度です。ポイントとして事業主から報酬を得られないことが条件となっています。
傷病手当金との支給調整について
傷病手当金との支給調整がされるのは傷病手当金が支給される原因となった同一の負傷・疾病をもとに障害年金が支給される時です。
例えばうつ病の療養のため働けなくなった場合で同じうつ病で障害年金を受給した場合には障害年金の金額の分傷病手当金が減額されます。
しかしながら、この時うつ病とは別の、肢体障害などで障害年金を受給していた場合には支給調整は行われません。
労災給付との支給調整
労災給付とは
仕事に関する負傷・疾病やそれを理由とする休業などに対して行われる給付です。
労災給付との支給調整について
障害年金と労災給付は併給が可能です。この場合労災給付が約1~3割ほど減額されて支給されます。
児童扶養手当との支給調整
児童扶養手当とは
児童扶養手当とは父母が離婚した児童、父または母が死亡した児童、父または母が一定の障害状態にある児童を養育している人に対して支給される手当で、子どもの養育がより困難な養育者に支給される手当です。
児童扶養手当との支給調整について
障害年金との支給調整は障害年金1級、2級と障害厚生年金3級の場合で異なります。
障害年金1級、2級の受給を受けている場合は児童扶養手当の額が「障害年金の子の加算部分」の額を上回る分、その差額が児童扶養手当として支給されます。
「障害年金の子の加算部分」とは障害基礎年金の受給権者によって生計を維持している子どもがいる場合に子の人数に応じて追加で支給される給付のことです。
障害厚生年金3級の受給を受けていて、児童扶養手当より障害厚生年金の総支給額の方が大きい場合は、児童扶養手当は支給されません。
一方、児童扶養手当より障害厚生年金の総支給額の方が小さい場合には、その差額が児童扶養手当として支給されます。
②扶養から外れてしまう場合がある
障害年金を含め、年収が合計して180万円を超える場合には健康保険上で家族の扶養から外れてしまいます。
扶養から外れてしまうと自分で国民年金に加入しなければならず、免除されていた保険料を支払わなくてはなりません。一般に障害年金を受給し、就労もしている方は年収が180万円を超える場合があるので注意が必要です。
しかし、障害年金のみで収入が構成されている場合には年収が180万円を超えることはまれなためあまり意識をしなくても大丈夫でしょう。
③死亡一時金・寡婦年金は支給されなくなる
死亡一時金とは
死亡一時金とは保険料を支払いながら、保険給付を受けないまま亡くなってしまった方に対して行われる給付で、支払った保険料が掛け捨てになってしまうのを防ぐ制度です。
死亡一時金の不支給
障害年金を受給していた夫と生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に関して、死亡一時金は不支給となります。
寡婦年金とは
寡婦年金とは10年以上保険料を納めた夫が保険給付を受けずに亡くなってしまった場合に支給される残された妻の生活保障を目的とした制度です。
寡婦年金の不支給
障害年金を受給していた夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に関して、寡婦年金は不支給となります。
④配偶者に加給年金が付かなくなる
加給年金とは
加給年金とは厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者または18歳の子(1級・2級の障害の状態にある場合には20歳未満)がいるときに加算される年金額のことです。
加給年金の不支給
加給年金の対象となっている配偶者が障害年金をもらっている期間は、加給年金は支給されません。
しかし加給年金をうけとれなくてもその期間は配偶者ご本人様が障害年金を受け取ることになります。
⑤老齢年金の繰下げができなくなる
老齢年金の繰り下げとは
老齢年金の繰り下げとは本来65歳で受け取ることのできる老齢基礎年金と老齢厚生年金を66歳から75歳までの間に遅らせて受け取ることで遅らせた期間の分、年金が増額される制度です。
増額率は変わらないためその後通常よりも高い年金額を受け取り続けることができます。
老齢年金の繰り下げ不可
65歳に達した日~66歳に達した日までの間が以下の状態の場合、老齢年金の繰下げ請求はできません。
障害基礎年金(国民年金)の受給権がある場合には老齢基礎年金の繰下げはできません。(老齢厚生年金(厚生年金)の繰り下げは可能です。)
障害厚生年金の受給権がある場合には老齢基礎年金・老齢厚生年金の繰下げはできません。
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