障害年金とは
「障害年金」とは、公的な年金の1つで、病気や事故が原因で障害を負った方へ、国から年金が支給される制度です。障害者のための特別な手当と勘違いされている方がいますが、実は老齢年金と同じ公的年金です。
障害年金は加入している年金制度や納めている保険料によって、受け取れる金額が異なります。
国民年金の場合は障害基礎年金を受け取ることができ、1カ月の平均額は約7万円です。
厚生年金の場合は障害厚生年金を受け取ることができ、1カ月の平均額は約10万円です。
障害年金は障害を持つ方にとって重要な制度ですが、申請方法が複雑で、途中であきらめてしまう方や申請したとしても条件を満たしておらず不支給となってしまう方もいらっしゃいます。
こちらでは障害年金をもらえない人について解説していきます。障害年金の申請を検討されている場合は事前にご覧ください。
障害者手帳と障害年金の関係
障害年金と障害者手帳は、一見よく似た名称なので両方とも同じようなものと誤解をされている方が多くいらっしゃいますが、両者は全くの別物です。
障害者手帳を持っていないからといって、障害年金がもらえなくなることはないですし、障害者手帳を持っていれば、必ず障害年金をもらえるというものでもありません。
ですが、障害者手帳が障害年金の申請において重要になることもあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
障害年金の要件
障害年金の裁定請求書が提出されると、申請者が障害年金を受給するための「初診日要件」・「保険料納付要件」・「障害状態要件」を満たしているか否かを国が確認します。
つまり、これらの要件を満たしていなければ障害年金を申請しても不支給となってしまいます。
初診日要件
初診日とは「障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」ということになります。
障害年金を受給するためには、この初診日を書類で証明する必要があります。
保険料納付要件
①初診日の前々月までの納付必要期間に対して3分の2以上納付していること
②初診日の前々月から過去1年間に年金の未納が無いこと
のどちらかを満たしていなければなりません。
障害状態要件
障害年金を受給するためには障害認定日において、一定の障害の状態にあることが必要です。障害認定日とは初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日を指します。
ただし、1年6か月を待たずに障害年金の申請ができる特例がありますのでご自身に当てはまるか、ご確認ください。
障害認定日の例外 | 障害認定日 |
---|---|
人工透析療法を始めた | 透析開始から3ヵ月経過した日 |
人工骨頭、または人工関節を挿入置換した | 挿入置換した日 |
人工弁、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)、心臓再同期医療機器(CRT)、除細動機能付き再同期医療機器(CRT-D)を装着 | 装着した日 |
人工肛門増設、尿路変更術 | 増設した日 または手術日から6ヵ月経過した日 |
新膀胱造設 | 造設した日 |
手足の切断 | 切断した日 |
咽頭全摘出 | 摘出した日 |
在宅酸素療法を始めた | 開始した日 |
脳血管疾患による機能障害 | 初診日から6ヵ月経過以降で 症状固定として認められる日 |
人工血管(ステントグラフトも含む)を挿入置換 | 挿入置換した日 |
人工心臓、補助人工心臓の装着 | 装着した日 |
心臓移植の手術 | 施術日 |
遷延性植物状態 | その状態に至った日から3ヵ月経過日以降、回復が見込めないとき |
障害等級の大まかな目安
障害を認定するにあたっては、疾病ごとではなく障害ごとに障害認定の基準にあてはめて、その等級を決定することになっています。
1級→活動範囲が自分の部屋の中
日常生活に著しい支障があり、かつ他人の介助が必須。ただし、例外として、全盲の方など働いていても、この等級になることもあります。
2級→活動範囲が家の中など
日常生活に支障はあるものの、最低限の生活レベル(簡単な食事作り等)であれば、辛うじて1人暮らしが可能。労働不能で収入が得られないことが前提ですが、援助があれば労働が可能な方も含まれます。
3級→短時間勤務や軽作業などの労働制限がある方
労働時間や職務内容等に制限がある方です。
(初診日時点で厚生年金に加入している方のみ受け取ることができます。)
障害年金の要件確認の流れ
具体的な流れとしては、まず年金事務所(国民年金の場合は市区町村の国民年金課)が内容を確認し、年金を受給するために必要な資格があるかどうかを判断します。そしてその後、障害の状態を認定医が判断します。
審査は診断書などの資料を見て客観的に判断します。
つまり、審査は診断書や申立書などの書類の内容ですべて判断されることになるため、日常生活の状態をきちんと伝えることができる書類を準備することが非常に重要になります。
所得があったら障害年金は貰えない・止まる?
障害年金は原則、所得による制限はありません。保険料を納めていることを前提とした制度であるからです。
ですが、保険料を納めていなくても障害の程度が該当すれば障害年金を受給出来る場合があるため、次の2つの場合は、本人の所得による制限があります。
①20歳になる前に、初診日があり、その初診日に厚生年金に加入していない場合
(知的障害など先天性の障害も含まれます)
②特別障害給付金を受ける場合
(特別障害給付金は、国民年金が強制加入ではない時代に、初診日に任意加入していなかったことで障害年金の対象とならない方のための救済制度です)
精神疾患の場合、働きながらでも障害年金は受給できる?
障害年金は働きながらでも受給は可能です。実際に働きながら障害年金を受給されている方も多くいらっしゃいます。
ですが、就労している方が障害年金を受け取りにくくなる可能性もあります。就労できている=障害の状態が深刻でないと受け取られてしまう場合があるからです。
目安としては「週5日、フルタイムで働けている」といった方は障害年金を受け取りにくく、「短時間の業務や軽作業のみを任せてもらっているなど職場から特別の配慮をうけている」、「障害者雇用で働いている」「調子に波があり、就職と退職を何度も繰り返している」といった方は働けていても障害年金を受け取れる可能性があります。
収入が減ってしまうというデメリットはありますが、治療に専念したい、という場合には休業することも選択肢の一つです。
障害年金をもらえない理由
障害年金をもらえない理由で多いものは以下の3つです。申請前にこのようなことが無いか確認しましょう。
①医師が書いた診断書を開けないで、そのまま出してしまっている
医師は病気やケガのエキスパートですが、障害年金についてはあまり把握していない場合もあります。
障害年金は申請ができる傷病名がきまっていますので、「適応障害」では障害年金を受給できませんが、「うつ病」の場合は障害年金を受給できます。
このように、診断書に記載されている傷病名など、診断書の確認は非常に重要です。必ず診断書が届いたら開封し、確認するようにしましょう。
②診断書の日常生活の部分と、申立書の内容が一致していない
障害年金の審査では診断書と「病歴・就労状況等申立書」という書類の一貫性が重要視されます。特に精神疾患の場合には体調の良い時に受診されることが多く、症状が軽く見られてしまうこともあります。
また、日常生活に生じている支障を医師に伝えきれていないケースも多いです。
そのため、診断書の内容と申立書に記載している内容が一致しておらず、障害年金が不支給となってしまう場合があります。
③申立書の内容が薄い
「病歴・就労状況等申立書」は病気やけがの障害のために、日常生活にどれだけ支障が生じているかを伝える主な書類です。
申立書の内容が薄いとどれだけ障害で困っているかが判断できず、不支給となってしまうことがあります。障害のために働けていない、家事や身の回りのことができていないなど、障害の状態を十分に記載するようにしましょう。
不支給になった場合の対応
審査請求・再審査請求について
障害年金の決定や処分に不服がある場合(障害年金が不支給になってしまった場合など)は、その処分を見直してもらうために、不服申立てをすることができます。
➀審査請求
審査請求は、裁定請求に対して不支給決定等の処分に不服がある場合、その処分があった日から3か月以内に地方厚生局に所属する社会保険審査官に対して行います。
②再審査請求
再審査請求は、審査請求において出された裁決に異議がある場合に行われますが、裁決書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に厚生労働省に設置されている社会保険審査会に対して行います。
最初の申請が重要です
障害年金の決定に不満があった場合には、「審査請求」と「再審査請求」の2回まで不服申し立てができます。ですが、実際に処分が見直されることは多くありません。
年金の受給可能性を高めるためには最初の申請でしっかりと準備をすることが重要です。
無料相談受付中
当事務所では障害年金についてのご相談を無料で受け付けております。
障害年金について詳しい説明が聞きたい・障害年金の申請方法がわからない・受給資格は満たしていそうだが、体調が悪く申請が難しい…といったお悩みをお持ちの方は是非一度ご相談ください。
また、有料での障害年金申請代行も承っております。ご自身での申請が難しい場合には当事務所にお任せください。